我が国の存続の絶対条件は平和である。軍事力では隣国に劣り、さしたる資源もない我が国にとって国際協調こそが唯一生き残る道といえよう。
　しかし、残念ながら近年の世界情勢は必ずしも穏やかならず。ふとしたところから戦端が開かれる可能性も否定できない。まったく油断のできない状況である。
　そこで、我が国の科学技術および伝統文化の粋を集め、密かに兵器の開発を行ってきた。これは極秘事項であるのでくれぐれも部外秘と心得ていただきたい。

　この兵器は敵の精神に働きかけ、戦意を喪失せしめるというものである。詳細は別の報告書にて開示する。ここでは概要を提示するをもってよしとされたい。
　この兵器は人間の五感に働きかけ、戦意を根本から挫く。例えば、特殊な音波を音楽に忍ばせ、聴くものの敵愾心を無にせしめるものがある。分かりやすく言えば音楽兵器だ。
　さらに映画などの映像媒体に識閾の精神作用情報をステルスさせる映像兵器もある。内容はアクションであろうとこの映像兵器を使うと戦闘意欲を著しく低減できる。
　さらには国産の特定の品種の犬、猫は海外でかなり好評であるが彼らの皮膚に特殊な加工を施すことで触覚兵器というべきものを生み出すことに成功した。その体毛もしくは皮膚に触れることで、穏やかな精神状態になるだけではなく、あらゆる戦闘行為に対する忌避の心が生まれるのだ。
　他にも様々な感覚を通して戦闘意欲を挫く兵器がすでに密かに海外に送られている。我が国はこれで戦乱に巻き込まれず、列強諸国に囲まれても安泰でいられるのである。
　ただし、困ったことにこの兵器には有効期限のようなものがある。常に効果的なものを更新していかないと抑止力は消えてしまうのだ。
　この兵器を開発するスタッフは実は民間人にまぎれている。極秘任務を遂行する隊員の名は伏せておこう。ただし忘れてはならない。彼らのおかげで平和が保たれているのだ。