つぎのもの

かたちになる前のなにか

Something new is wonderful.

命名権

 手数料を払えば好きな名前に改名できるという法律が施行されてもう50年がたった。手数料はちょっと高く、高性能パソコンくらいなら買えてしまう値段だ。それでも変えたいという人もいて様々な珍名が登場した。
 私たちの生体認証情報はすでに国家に掌握されている。たとえ名前を変えても生体認識ですぐに分かってしまう。だから名前を変えても誰だかすぐ分かってしまうという訳だ。生体認証番号が本名であってそれ以外はみんないわばハンドルネームということになる。
 私の場合、確か親が付けた最初の名前は次野物次郎、それを二十歳の記念に新田進にして、その後ネクスト・ニューワンとかブレイク新流とかまだまだいろいろ改名した。でも何を名乗っても私は認識番号で把握されるのだ。契約でもサインは書かず、カメラの前に立つだけだ。
 結局、私は認識番号なのだろうか。それは考えないことにして、次の命名権を行使するために貯金を続けるようと考えている。

Mihai SurduによるPixabayからの画像