つぎのもの

かたちになる前のなにか

Something new is wonderful.

究極のペット

 犬より猫を飼う人が増えたのだそうだ。理由はいろいろあるが、散歩に連れて行かなくても勝手に生きているかのような生態が現代人の生活様式に向いているからだという。
 でも、犬のように主人にべったりと付き添ってくれる生き物にも魅力はある。自分だけを頼りに生きているかのような瞳を向けられると、たまらなくいとおしくなるものだ。それが犬の良さだと思う。
 猫のように気ままで、犬のように従順なそんな愛玩動物がいればいいと思う。でも、それはなかなかいない。そこで禁断の遺伝子操作で二つの良い面を合わせてしまおうという者が出てくる。生き物を創造するのは神の専売特許のはずなのに、それを人間がやってしまったのだ。
 この動物にはまだ名前がない。ここでは仮にホープとでも名付けておこう。希望という意味だ。ホープは外見上は猫の姿とそう変わりはない。そして運動系も猫に準ずる。しかし、決定的に違うのは人に従うことだ。この従うというのは犬的な従属とはちょっと違う。たとえば今はいっしょにいたいと思うときはとことん一緒にいる。適度な甘えをみせて飼い主の保護意欲を満たす。そしてそれがうっとうしいと思うときは自ら身を引く。そして、時には視界から消えて一人(一匹)で生きている。要するに人間の心理を察するに長けている動物なのだ。
 ホープの欠点は人の心を読み過ぎる点だ。気遣いのできる動物ともてはやされるときはよい。それが自分の心理を読んで行動することが度々あるとなんか空恐ろしいものに見えてくる。本当は自分の心理の投影に過ぎないものかもしれないのに、やたらと自分の夢や希望を統制するものと考えられてくる。