つぎのもの

かたちになる前のなにか

Something new is wonderful.

有人コンビニ

 もう何年も前になるか全国のコンビニエンスストアが全て無人化した。当時は懐疑的だったこの業態がいまでは当たり前になっている。

 店舗に入るとカメラによって顔認識がされ、認証されたものだけがゲートを通過できる。ここで認証されないと不審者として関係機関に自動通報される。何でも30秒は猶予があるらしいから、国民ナンバー届を出していない不届き者は即座に退去した方がよい。もっとも最近はどこに行ってもこのシステムだから、おそらく行き場はない。

 店に入ると陳列棚には豊富な品揃えがある。棚から取り出すとセンサーが本人情報を照合して購入リストに品物を追加する。レジはない。そのまま店を出ればいい。出た瞬間に口座から代金が引き落とされる。返品は面倒だから店を出る前によく考えること。

 一昔の感覚では万引きでもしているかのようだが、これで立派な買い物だ。様々な防犯システムが作動しているからこっそり持ち逃げはできない。そんなことをしてもあとでしっかり請求される。

 最近はこうした無人店舗ばかりになったので、昔を懐かしむ人のための有人コンビニが話題になっている。昔のコンビニの風情を残している懐古的な店舗だ。店に入ると紋切り型の挨拶をされ、レジでは現金しか受け付けない。面倒くさいがお釣りを渡すときに女の子が手を握ってくれるのが嬉しくて通っている常連がいるとか。

 ただ、昔と違ってレジ袋に器用にものを詰めたり、小銭を即座に数えたりできる人材の確保には困難を極めるようだ。いまや有人コンビニはなかなかないレアなスポットなのだ。