つぎのもの

かたちになる前のなにか

Something new is wonderful.

有効期限付き繊維

 では、次のニュースです。
 低迷する日本の繊維業界に救世主が現れました。これは画期的な発明だといわれています。それは有効期限付き繊維。なんと、あらかじめ設定した時間までは丈夫な繊維として機能しますが、それが終わると24時間以内に跡形もなくなってしまうという優れものです。
 この繊維の有効期限は完成の最終段階で決めることができます。例えば高校の制服などは3年間は着ますが卒業してしまえば要らなくなりますね。もちろん思い出の品として取っておく人もいますが多くはそのうち棄ててしまうのでしょう。それならば有効期限を3年とちょっとにしておいて後は自動消滅するようにしておけばいいわけです。
 消える際にはほとんど何も残りません。ほこりのようなものが少し残りますがほうきなどで軽く払えばお掃除完了。出た廃棄物は燃えるゴミとして普通にゴミ出しできます。環境にも優しい。収納スペースのない現代の住宅事情にもぴったりです。
 でもくれぐれも気を付けてほしいのは有効期限の設定ミスです。おしゃれをして出かけたつもりで、途中からセクシーな格好にならないように。
 以上今日の注目ニュースでした。

励まし屋

 彼は超一流の教育者だ。でも何も教えていない。国語とか数学とかそういう専門はない。第一彼自身がそういう科目は苦手だ。ろくに文章も書けないし、簡単な方程式さえ書けない。でもかれが一流の教育者であることは誰もが認めている。
 彼は大学を卒業できなかった。教育学部に入ろうとして試験に3度挑戦し、3度失敗した。卒業できなかったのではなく入学できなかったのである。でも、彼はその後、働きながらいろいろな経験をした。肉体労働もした。ほかの人がやりたがらない3Kもやった。他人には言いたくないちょっとやばい仕事もした。いろいろやって気づいたことがある。彼は自分自身の成績は良くなかったが、周りの人をやる気にさせることができた。やる気を引き出す能力があったのだ。
 最近は教育界もずいぶん変わった。かつては先生と呼ばれる超越者が教室を支配していたが、もうそういう存在を重んじる人はいない。AIで動作する教育ロボットが生徒一人一人の能力に合わせたカリキュラムをまさに臨機応変に展開するからだ。効率的なやり方で学力の増強を短時間で達成できる。偏屈な教員などもういらないのだ。
 それで何が残ったか。それは生徒を励ます役目だ。ファシリテーターなどという名前も付けられたことがあったが、要するに励まし屋だ。これはまだAIにはできない。何しろ最高のプログラムを用意しているのにやる気にならない生徒などAIには想定できないからだ。そこを彼のような励まし屋がうまく乗せてくれる。彼はAIロボットの前に生徒を連れていく役目をするだけである。傍から見るとお調子者の太鼓持ちのようにも見えるが、それがまだ教育界に残されている数少ない人間の役目なのだ。

ライフナビ

 何かをやろうと思ったとき、幾たびか決断をしなければならないことがある。どんなことでも選択を誤るとうまくいかない。場合によっては致命的な失敗になることもある。躊躇するあまり好機を逃す。後悔先に立たず。やっておけばよかったのにと思っても後の祭りだ。
 そんなことを解決するのがライフナビだ。一見スマートフォンにも見える。というよりスマートフォンのアプリの一つのようなものだ。ライフナビは困ったときに電話をかけるように話しかけるとすぐに答えてくれる。最新鋭のAIが過去のデータを瞬時に分析し、最も成功率の高い選択をしてくれるのだ。データ不足の場合は類似の例で対応する。精度は落ちるがまず外すことはない。
 株を買うかどうか、不動産投資などは得意分野だ。もう十分なデータがある。野球で次に投げるべき球種もグローブに仕込んだライフナビに聞けばいい。恋愛相談ももちろんできる。どのような恋愛をしたいのかもライフナビに話せばより正確なアドバイスがもらえる。
 ライフナビは高性能のホログラムを内蔵しているので相談役を立体映像として見せてくれる。性別や年齢も選べる。何を着せるか着せないかも自由だ。スマートフォンの画面の二次元キャラクターが話すよりよっぽど説得力がある。
 問題はいくつかある。恋愛相談をした場合、相手もまたライフナビを使っていたらどうだろう。告白のための綿密な計画をアドバイスして実行しても、相手が拒否するための綿密な計画をライフナビにさせているかもしれない。ハードルは高い。
 それならいっそのことライフナビ同士で話し合いをさせたらいい。弁護士を頼むのと同じだ。そうだそれがいい。
 ライフナビを運営している会社が怪しいだって。そんなものもう慣れているじゃないか。今だって。

つぎのもの



 まだ見たことがないつぎのものを考えるのがこのブログの目的だ。
 見たことがないから、どんなものかわからない。どんなものかわからないから言葉にもなりにくい。それを手持ちの言葉でなんとか表現する。
 言いたいことをズバリと言い当てることは期待できない。周辺をかすってようやく本当に言いたいことがチラリとでも見えたなら良しとしよう。
 そんなブログだ。もしお付き合いいただける方がいらっしゃったら時々覗きにいらしていただきたい。